おいしい映画 その4 横道世之介

おいしい映画-横道世之介

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おいしい映画、第4弾。前回に引き続き「横道世之介」です。

さすが南極料理人の監督さん!かどうかはわかりませんが、この作品も、実に食べるシーン多し。絵に上げたものの他にも、真夏に水桶に足つっこみつつラーメンを啜る場面とか、居心地の良い加藤くんの部屋で、自分のサンバサークルのビデオを繰り返し再生しているお邪魔虫な世之介に、加藤くんは大きなスイカを切って出して上げるとか…
世之介が、クリスマスに彼女・祥子さんを部屋に招待する場面は、こたつの上にフライドチキンやらサラダやらを、精一杯ゴージャスに並べ立てているのが微笑ましいし、なかなか美味しそうです。そしてたった二人なのに、祥子さんは立派なケーキをホールごと買って現れるのです。
そういえば、デキちゃった婚で大学をやめてしまった、サークル仲間の倉持くん・唯ちゃんの16年後のシーンは、2003年のある日の晩ご飯でしたっけ。

「横道世之介」 2013 監督=沖田修一

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横道世之介

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3月に見た作品を、地元の飯田橋ギンレイで2度目の鑑賞です。
前も大変面白かったですが、2度目はより深くハマりました。綴られる1987年と、その時代を各人が思い出す16年後の2003年、時間を行き来するその構成の上手さには舌を巻きます。

世之介が、長崎から市ヶ谷の大学へやって来た1987年。斉藤由貴の巨大広告に、前髪をフワフワに持ち上げるロングヘアの女性。武道館の入学式で、たまたま隣り合わせた倉持くんは親友となり、人違いで声をかけたクールなイケメン加藤くんとは、「友だち紹介5%引き」のために一緒に教習所へ、そこで加藤くん目当てで声かけてきた女性が、ダブルデートに連れてきた幼なじみの祥子さんとは、忘れられない恋をすることに…。
洗面器に足を突っ込む真夏のワンルーム、夏休みに帰省した長崎、秋のサンバイベント、クリスマスの初雪、バレンタインで間違えて配達されたチョコレート、季節らしい出来事とともにほぼ1年間、大学1年生の世之介が、どんなきっかけで各人と関わっていくのかが、丁寧に描かれています。

長崎の夜の海で初キス!のはずが、ベトナム難民の上陸に鉢合わせ。天然のお嬢様・祥子さんは、多分その経験がきっかけで、16年後の2003年、NPO法人で途上国を飛び回る女性になっています。「死んでる」と噂される謎の隣人に、間違えて配達されたチョコを届けに行った世之介は、始めて彼が報道写真家だと知ります。世之介が16年後にカメラマンのなっているのは、その人の作品と、借りたカメラがきっかけなのでしょう。加藤くんは高級マンションで男性と暮らし、世之介の憧れ、破産寸前の男からBMWを巻き上げるような真っ赤な口紅の千春さんは、16年後はナチュラルメイクのラジオパーソナリティに。そして、この千春さんが報道する、ある夕方のニュースで、世之介が電車事故で亡くなったことが、見ている我々にもわかります。

主人公が不慮の死で亡くなっているので「悲劇」なのですが、パンフレットに記述があるように、原作の吉田修一さんは監督の沖田修一さんに「コメディにしてほしい」とだけ伝えたとか。ラスト近く、都庁付近を祥子がタクシーで通りながら、16年前の仲良しの自分たちを幻視するようなシーンもホロリ、終わりの、余貴美子さんのナレーションもホロリ。泣けます。が、悲劇ではないんです。きっと、DVD買って、何度も見てしまうだろうことが予測されます(笑)
長尺160分とは思わせない作品でした。

「横道世之介」 2013 監督=沖田修一

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wowowで宇宙人ポール

宇宙人ポール

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨年予告を見て、面白そうで気になっていましたが映画館には行けず、そうこうするうちにもう年明けにwowowに登場です。録画しておいて最近見てみたら、あまりに面白くて3回鑑賞。
SFオタクで、それぞれSF小説家、イラストレーターでもあるクライブとグレアムが、はるばるイギリスから、SFマニアの祭典「コミコン」にやって来ます。エリア51などの宇宙人関連の観光地を、レンタルのキャンピングカーで楽しそうに廻るうち、政府の研究機関から逃げてきた本物の宇宙人に遭遇。「ポール」と名乗る小柄で緑色の彼は、気の効いたジョークと教養を持ち合わせた、シニカルなインテリおやじといった風情です。
「未知との遭遇」「ET」「スタートレック」「タイタニック」と、前編に散らばるパロディも楽しく、彼を追う政府機関の女上司はシガニー・ウィーバー、声だけ出演のスピルバーグに電話でネタのアドバイスなど、盛りだくさんです。
脚本が良く出来ているので、繰り返し見て楽しめそうです。

「宇宙人ポール」Paul 2011 監督=グレッグ・モットーラ

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山種で竹内栖鳳

10月28日に、山種美術館で「竹内栖鳳展」を観てきました。
前期後期で作品が一部入れ替わるので、後期を見てからブログをアップのつもりが、開催期間を間違えてました。年内いっぱいと思っていたら11月までだった…残念… ただ、見たかった『班猫』は堪能しました。

久しぶりに山種へ出かけようと思ったきっかけは、実はドラマ。相棒season10、第2話?あたりで水谷豊扮する杉下右京が、警察庁幹部の石坂浩二との待ち合わせ場所に、この美術館を指定します。「この『輪島の夕照』が僕は好きでねぇ」などと言う石坂浩二の後ろに、奥村土牛『鳴門』が映っている! やたっ、これを今見られるのか!と検索しましたが、放映が10月ならば当然、撮影は夏(当たり前!)、終わってました… でもその代わりに竹内栖鳳展を見つけた次第。

特に生き物が良いです。落語「抜け雀」ではありませんが、鴉も蛙も兔も猿も、絶対に夜動いていそう。あと、墨で描かれた風景も好きですね。
日本画好きの母の影響で、昔から画集や竹橋の近代美術館の常設を見たりしましたが、ホワイトスペースや物の削ぎ落としなど、グラフィックに通じる部分がとても多くて興味深いです。

「竹内栖鳳」 山種美術館 2012年9/29〜11/25

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ふがいない僕は空を見た

以前見た「百万円と苦虫女」が好きだったので、タナダユキ監督新作をテアトル新宿へ見に行ってみました。

上り調子でない今の自分にとって、「何かを勝ち取る」や「絶対的な家族の絆」は気持ちが引いてしまいますが、こういう映画は沁みます。
身の丈にあった幸せがあれば良しと思っているだけなのに、歯車がずれてあらぬ方向へ転がり出す。それに逆らえず、痛みを抱えて生きていくしかない〝特別ではない人たち〟をタナダ監督は描きたかったそうです。

時折映し出される広い河川敷やイチョウが美しく、どの辺りのお話なのかなぁと。原作者・窪美澄さんの出身が東京都稲城市とあるので、河は多摩川なのでしょうか。
撮影の大塚亮さんは「ゲルマニウムの夜」「魂萌え」「まほろ駅前多田便利軒」と絵作りが印象に残っている作品ばかり。
小箱に入れて、大事に取っておきたい感じの作品でした。
「ふがいない僕は空を見た」 監督=タナダユキ

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鍵泥棒のメソッド

仕事の入稿を終えて、映画検索などしていたら、なんと1日は「映画の日」。1000円はありがたいぞと、慌ててチケットをゲット。バルト9でも大きい方の405席スクリーンが、平日夜にもかかわらずほぼ満席で、皆さま割引などの情報はマメにチェックするのだなと感心しました。

そして映画、楽しかったです。文句なく。本当に脚本がうまいですね。
あとは画面の作り込み。カチッとした文字で埋め尽くされた香苗(広末涼子)のシステム手帳と、おおよそ成功しそうにない桜井(堺雅人)の汚〜い字の逃亡計画表。整理され、アルコールで拭き取ったように無機質なコンドウ(香川照之)の部屋は、桜井に入れ替わって見る間に散らかり、逆にごった返しの桜井の部屋は、コンドウが住むうちピシ〜ッと片付けられる。
それから、香苗の父親(小野武彦)が自分の余命を知っていて、妻と娘に当ててビデオレターを残すのですが、葬式の折、みなが涙で見ている途中で「今日のお前のウェディングドレス姿が見られなくて残念…云々」なんてセリフになり「あ、DVDが違う!ちょっと止めて」とお母さん(木野花)。斎場の担当があわててDVDケースを確認すると「結婚式用」のラベル。泣き笑いです、ホント。隅々まで目に楽しい作り込みがなされ、これはDVDで繰り返し見てしまいそう…

前作「アフタースクール」の時、田畑智子が愛人だと信じて疑わずに見ていて、きれいに騙されましたが、今回も血なまぐさいシーンから始まって「おや、今回はハードボイルドか?」と思っていたら、やはり騙されてしまいました。

コンドウが仕事の時にかけるベートーヴェン『弦楽四重奏』は、ハマったのでCDを買おうとしたら1〜16番まであるので(さらにそれぞれに4楽章ずつ)、Amazonで視聴しまくって、暗め重めの始まりだったから14番あたり?と、スメタナカルテット盤を買ってみました。着信も第九だし、コンドウはベートーヴェン好きってことですかね。

かつて、シャンテのプログラムはシナリオ採録がお約束でしたが、近頃は岩波ホールぐらいしかお目にかかれません。今回のこの作品、プログラムのシナリオ採録は大変うれしいです。あちこち読み返しては、クスっと笑うお楽しみがありました。

「鍵泥棒のメソッド」 監督=内田けんじ

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天地明察

原作は未読ですが、物語が非常に面白かったです。

冒頭、将軍の前での囲碁の対局。世紀の大勝負のはずが、日蝕のせいで中止になります。暦がずれていることで生じる多くの不具合を正したい幕府と、膨大な利権が絡む暦を独占したくて、改暦を許さない朝廷。この対立のまっただ中で、改暦プロジェクトの責任者に抜擢される安井算哲のお話。

声の良い人が揃っています。宮﨑あおいの声は前から好きですが、算哲・岡田准一、光圀・中井貴一、特に算哲を任命する保科・松本幸四郎は本当に聴き心地の良いお声。

あとは、目に楽しい大道具小道具の数々。高台に立つ観測所の、ダンゴムシの背中のような天井が、ガコンガコンと開くシーンなど、ワクワクしましたね。

「壬生義士伝」「おくりびと」と、素敵なシーンがいくつもあるのに、クライマックスでベタベタな「泣かせシーン」を押し売りされて残念だった最近の滝田作品。今回は最後まで楽しめました(師匠が殺されるシーンが少々やり過ぎな気もしましたが…)それに、この大人数を出して、それぞれのキャラがしっかり立つ群像劇は、すごい手腕だと。岸部・笹野のコンビも飄々とした良い役どころでした。

「天地明察」 監督=滝田洋二郎

 

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丸亀・豊島・ボルタンスキー

高松へ1泊、小豆島へ1泊のプチ旅行に行ってきました。

海際の巨大カボチャ(草間弥生)などを見てみたくて直島へ出かけたのが3年前。その折も高松へ1泊しましたが、その時は金刀比羅宮の方へ行ってしまい、今回は、その折訪問を見送った丸亀へ。

◆丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
JR予讃線丸亀駅の真ん前。天井と左右の側壁で囲われた空間に、巨大な壁画とオブジェが設置されている美術館正面は、何度も写真で見て、訪れたい美術館でした。開催中の企画展は「塩田千春」 2001年の横浜トリエンナーレ、巨大なドレスに水が流れる作品を良く覚えています。今回は、巨大な白いドレスに輸血のチューブのようなものが夥しい数絡み付く作品、使い古しのトランクが、やはり夥しい数、ゆるい弧を描いて積み上げてある作品、そして廃船に、天井に設置されたいくつものシャワーから終始、雨のように強く弱く水が降り掛かる作品。いたはずの人間がいなくなり、気配だけがそこに残っているような「喪失感」というか、どれもちょっと寂しい心持ちになります。好きですが…
常設展示の方は、2010年オペラシティの「猪熊弦一郎展・いのくまさん」では残念ながらあまり見られなかった、NY時代のThe Cityシリーズをまとめて見ることが出来ました。フラットな原色をバックに、幾何的な黒い街並が一直線に並ぶこのシリーズ、展示空間も広々と気持ちよく、近ければ何度でも通いたいところです。
小豆島はのんびり観光する予定でしたが、丸亀美術館でもらった「旅の美術手帳」(スタンプラリー仕様。瀬戸内海周りの13の美術館の紹介と、手帳を提示すると2館目から料金が割引に)を見ていたら、小豆島の隣の豊島(てしま)にど〜しても行ってみたくなり、高松空港の帰りの飛行機の時間をにらみつつ、かなりの綱渡りでアート巡りをしてしまいました。
小豆島・土庄(とのしょう)港からフェリーで30分、豊島・唐櫃(からと)港へ。

◆豊島美術館
建築家・西沢立衛とアーティスト・内藤礼のコラボ作品だそうで、卵の殻をカポッと伏せたような建築物に、内部は純白、防水加工を施した真っ白な床の小さな穴から、少量の水が迫り出してきてコロンとした水玉に。微妙な起伏のある床を、生き物のようにあちらこちらに転がります。音の聞こえ方もくぐもって平衡感覚も狂いがち、「異空間に在る」感は、なかなかのもの。

◆心臓音のアーカイブ
豊島美術館から、タクシーで15分程度のところに、クリスチャン・ボルタンスキーの小さな美術館が。林の中にあるので、途中からは徒歩。ヤブ蚊にも刺されます。
世界中で集めた心臓音の保存データを好きに聴ける「アーカイブ」と、間口は狭いけれど奥行きのある真っ暗闇の部屋で、心臓音に合わせて電球が明滅する「ハートルーム」。心臓音というから、胎内感覚でゆったりするところなのかと思いきや、爆音で、闇の奥から何か迫り出してきそうな恐ろしい感じがして、あまり長くはいられませんでした。古い写真が蠟燭に照らされる祭壇のような作品、部屋の真ん中に置かれた廻る幻灯機が、周りの壁に影絵を映し出す作品など、静謐なものしか知らなかったのでビックリ。新たなる展開なんでしょうか…
面白いのは、希望すれば自分の心臓音をアーカイブに加えられること。「ボルタンスキー作品に参加するぜ!」とばかり、一人1500円も払って、連れ合いと二人40秒間の心臓音を録音してきました。その録音CDも記念にいただけるのです。他に誰もいなかったので、自分の心臓音で作品を体感させてもらえたのは、ラッキーでした。

豊島-高松間フェリーは、通勤仕様で昼の便が無いので、小豆島経由でアタフタ船を乗り換えます。さすがに疲れました。
それにしても、なぜこんなにまでがんばって、アート巡りをしているのでしょうね、自分…
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館「塩田千春 私たちの行方」
豊島美術館 建築-西沢立衛 アート-内藤礼「母型」
心臓音のアーカイブ クリスチャン・ボルタンスキー

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アメージング スパイダーマン

半ばお付き合いで見たようなものでしたが、面白いのでビックリしました。

ライミ版よりも、それぞれのキャラが立っているし、「社会科見学に行って蜘蛛に刺された」よりも、失踪した両親がオズコープの研究者、共同研究者だったコナーズに会いに行き、ラボに入り込むという運びの方が、腑に落ちるといいいますか… でも、やはりコスチュームは手作りなんですね。

物語がしっかりしているだけに、あの「トカゲ男」はヤリ過ぎな印象。あれだけが物語から浮いてしまったように思えました。
グウェンを助けるために、怪我を押して、通りの遥か向こうに聳え立つオズコープ社へ向かおうとするピーター。彼に息子を助けてもらった建設現場の主任が仲間に呼びかけ、ビルの屋上に設置された巨大クレーンを、一斉に通りへ向けてセッティングしていくシーンは、久々にワクワクしてしまいました。

「…守れない約束もあるよ…」のラストも粋!

「アメージング スパイダーマン」The Amazing Spider−Man 監督=マーク・ウェブ

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おいしい映画 その3 バベットの晩餐会

レンタルビデオだDVDだと、映画館以外でもガツガツ見まくってしまう自分にとって、好きな作品でありながら25年間見返すことが出来なかった作品というのは珍しいです。

1987年デンマーク映画「バベットの晩餐会」、日本公開は1989年でした。前半1時間は物語をほぼ忘れておりました。舞台はデンマーク、ユトランドの海辺の小さな村、厳格な宗派の牧師を父に持つ姉妹マチーヌとフィリッパ。この美人姉妹に惚れ込むのは、パリで売れっ子の声楽家パパンと青年将校ローレンス。結局姉妹は独身を通し、2人ともふられてしまいますが、この声楽家のご縁で1871年、パリ・コミューンで夫と息子を殺され逃亡してきたバベットが、家政婦として姉妹の家に住み込むことになるんですね。

それから14年の月日が流れ、彼女もすっかり村に馴染んだ頃。毎年パリの友人から送られてくる宝くじが、ある日大当たります。その金額1万フラン! 現在ならば20万フランだそうなので450万円ぐらいなのでしょうか。
姉妹は、これでバベットがパリに帰ってしまうとヘコみますが、彼女はこのお金で、もうすぐやって来る亡父の牧師生誕100年記念会の晩餐を用意させて欲しいと申し出ます。信者はみな老いて、集まっても12人だけ。簡素に済ませようと考えていた姉妹は戸惑いますが、14年間実直に働いてくれた彼女の初めての頼みとあって、晩餐の準備を任せることに。

さぁ、ここからが後半の見所! はるばる船で買い出しから帰って来た彼女が運び込んでくるのは、ウゾウゾ動く大きなウミガメ、皮を剥いだ牛の頭、ピィピィ鳴くウズラの籠を下げ、黒マント翻して戻って来たバベットは、さながら「黒の女王」の風情。姉妹はドン引きして、信者に「魔女の饗宴」に招いてしまったことを詫びる始末。結局全員で「我々は牧師さまを讃えるためだけに集まるのだから、料理のことは一切考えない、話題にしない」と決めます。
晩餐当日、コットンの白クロス、銀食器で美しく整えられた食卓に、出て来る出て来るゴージャスな料理。ここで、かつて姉に惚れ込むも、諦めた青年将校ローレンスが、はげ頭の立派な将軍となって同席するのですが、料理の話題を避ける村人たちをよそに、食前酒のアモンティヤード、ウミガメのスープからもうテンション上がりまくりです。この将軍のはしゃぎっぷりがとても楽しい。そして「うずらのフォアグラ詰めパイケース入り」で、パリで同じものを食べたことがあると言い出します。そう、彼女はパリのレストラン「カフェ・アングレ」の有名な料理長だったわけです。

老いて気難しくなって、最近はけんかばかりだったみんなも、最後はワインで赤ら顔。幸せそうに帰っていきます。バベットも宝くじの1万フランを、この一夜の晩餐できれいさっぱり使い果たし、姉妹と3人、また明日から質素な生活が始まるわねぇ…という感じのラスト。
私もしばらくはDVDを封印、また数年後に見返して、再び幸せな気分に浸ることにしようと思います。

「バベットの晩餐会」Babette’s Feast 監督=ガブリエル・アクセル

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