永遠の僕たち

仕事納めの年末28日に、「永遠の僕たち」を観に行きました。納め会やら飲み会やらで映画館は空いているかなと思いましたが、日比谷シャンテの一番大きなスクリーンが結構埋まっていて驚きました。

ガス・ヴァン・サントは「マイプライベートアイダホ」「エレファント」「MILK」と、好きな作品が多いですが、これも沁みました。
両親を事故でなくし、自らも臨床的に3分死んだ経験のあるイーノック。癌を患い、再発でもう余命3ヶ月と宣告されているアナベル。第二次大戦末期に、特攻隊員として戦闘機に乗り、戦死したヒロシ。オレゴンはポートランドの街に、いきなり特攻服の日本人が現れるのって、やはり浮いた感じになるのでは?と、観に行く前はかなり不安でしたが、見事にハマっているんです。脚本家のコメントに「今回2人は携帯もネットもツイッターもやらない、なんかフェイスブックをチェックするタイプに思えなくて…」とありましたが、本当に、日本語の縦書きの手紙を手に持つイーノックがしっくり来るんですよね。ヒロシに「お辞儀」を教わるも、首だけヘコッと突き出したり、なかなかうまくいかないシーンも微笑ましいです。アナベルも、時間があると鳥や虫の絵をコリコリとスケッチブックにで描きこみ、いつまでも静かに一人で過ごせる少女、そしてヒロシは簡単な英語を喋る。3人が、生きる時代も場所も超越してしまった風情があって、並んでも違和感がないんですね。

「MILK」も「エレファント」もそうでしたが、この作品も、死の間際とか事件の瞬間とか、お約束の「泣かせシーン」を潔くカットしてしまっています。(グッドウィルハンティングの「抱き合って号泣」もパラノイドパークの「列車で胴体が切断されて腸が〜」なんてシーンも撮る人ではありますが…)それでも、アナベルの静かな一言「そろそろ行かなくちゃ」には泣いてしまいました。
生前彼女が自分の葬式の演出を楽しそうに語るのですが、ラストはその演出通り、カラフルなゼリーやクッキーをぎっしり並べたテーブルの向こうで、イーノックが微笑みながら、葬式の参列者に挨拶しようとするところで終わります。死の物語なのに、救われた気がする魅力的な映画でした。
「永遠の僕たち」Restless 監督=ガス・ヴァン・サント

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