日本画どうぶつえん

かねてから、訪れたいと思っていた山種美術館へ行ってきました。
渋谷から「日赤医療センター」行きバス「東4丁目」下車、以前広尾に事務所をもっていましたが、そのすぐ近くでした。なんで、こんなに近いのに知らなかったの?自分 と思ったら、2009年10月に兜町から移転したばかりなんですね。
収蔵品の中で、動物がテーマの日本画ばかりを集めた企画展で、猫、犬、馬、兔などの「愛しきものたち」、鶴、木菟、鴨などの「翼をもつものたち」、鮎、鯉、飛魚などの「水の中のいきものたち」、蛙、蜻蛉、蝶などの「小さきものたち」と、夏休み企画らしい、わかりやすい展示で楽しめました。
スペースが小振りなので、お気に入りを繰り返し眺めるのにちょうど良いのです。私は、奥村土牛の一連の作品にやられました。皆柔らかでシンプル、バックなんてほとんど何もない。とくに「啄木鳥」、バックの木は軽くグレーで、啄木鳥だけが黒白斑に所々真っ赤な羽がピッと入る。この削ぎ落とし具合は、唸ります。母親がこの方の作品が好きで、でも小学生の自分は奥村さんの絵が上手いのか下手なのか微妙〜という印象でした。母親が大事に取ってあったカレンダーのひとつは猫の絵で、赤い座布団は真俯瞰なのに猫が横からの視点で、遠近が変、もうひとつは踊り子の絵で、なんだかバレリーナのスタイルが良くない、などというつまらない理由で。あ〜何もわかっていなかった小学生坊主の自分…。
ただ、今はわかっているかというと、今回の展覧会でも「あ、この牛も土牛さんらしいな、うんうん」などとよく見たら小林古径だったりして、ああ、私はド素人…
速水御舟の有名な「炎舞」も初めて見ました。でかい作品を想像していたら、意外にこぢんまりした作品なんですね。この絵の前で、涎垂らさん勢いでかぶりつきで見入っていたカップルは微笑ましかったです。「なんで、なんで? なんでこんなにすごい赤なの?」だそうです。同感。
おもえば、昨年竹橋の近代美術館で観た「上村松園」、2008年の「横山大観」「東山魁夷」、2006年の「プライスコレクション」伊藤若冲と、日本画展でいつも思うのはその圧倒的な画力で、これはもうひれ伏すしかありません。私などが美大に行ってスミマセンとい心持ちに… 今回の、速水御舟の馬の素描も、細い筆でスッスッと描いているその脚やお尻の線の美しいこと。
あと、日本画のタイトルは情緒がありますね。その反面覚えにくくて難儀。今回の作品群は、わかりやすいものが多いですが、作品リストに必死でメモ書きを残しました。だって、春光、木精、黒潮、なんて絶対何の絵だったか忘れますもん。「春光」は奥村土牛の鹿、「木精」は山口華楊の梟、「黒潮」は川端龍子の飛魚の絵でした。とくに「黒潮」カッコいいです。躍動感と青の深さには見蕩れました。

タイトルといえば、だいぶん前に竹橋で観た高山辰雄展での一連の作品名。とても深く情感のあるものが多く「なんて読むの、これ?」なものも続出。例えば「凍」「萌える春」「穹」「皓皓」… 絵とともに見ると納得なのですが、おもしろいので、これが英語だとどうなるのか、見比べたことがありました。それぞれ、凍「Freezing Dawn」 萌える春「Fresh Leaves of Spring」 穹「Sky 」 皓皓「White Moonlight」。なんだか… そのまんまですし… 日本語ってやはり深いです。

大変残念だったのは、一番のお目当ての竹内栖鳳「班猫」が、期間前半で引っ込められていたこと。どうも2週間程度しか出しておけない決まりのようです。年末の「ザ・ベスト・オブ山種」に出されるようなので、これに期待します!

「日本画どうぶつえん」 山種美術館

 

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